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企業の投資は少ない? 〜内部留保と投資について考える〜



こんにちは。前回、企業なお金を貯めこみすぎている?と題して内部留保についての説明と、本当に政府が言う投資が少ないのか少し考えてみました。しかし安倍政権が言うように企業はお金を貯めこんでないかもしれない、という疑問が浮かんできましたね。

今回は、もう少し具体的な数字も見ながら、ない頭を使って自分なりに考えてみました。こういうのは複雑な計算が必要になるんでしょうが、あくまで参考程度で。また無駄な計算もたくさんするかもしれませんが、そこはご愛嬌で。ではサラッと書いていきます。

統計資料から具体的な数字を見る

まずは具体的な数字を見ないと判断できません。面倒なことは苦手なので、ザックリとつかむため、平成22年と直近の平成26年の全産業の数字を比較します。データは財務省の法人企業統計調査の資料です。

比較対象に平成22年を選んだ理由としては比較的最近で、売上が低い時と比べたかったためです。ですがリーマンショックが起こった平成20年と影響が出ていたであろう平成21年は特殊すぎるかなぁ、と考えたため平成22年を選びました。全産業と言っても金融業と保険業は除きます。これはニュースなんかで報じられているデータはおそらく金融業、保険業を除いたものであるからです。

売上(億円)
平成22年 13,857,426   平成26年 14,478,425

当期純利益(億円)
平成22年 186,864              平成26年 413,101

配当金(億円)
平成22年 103,574              平成26年 168,833

内部留保(億円)
平成22年 83,290                平成26年 244,269

設備投資(億円)
平成22年 330,802              平成26年 398,228

人件費(億円)
平成22年 1,948,388           平成26年 1,958,965

現預金(億円)
平成22年 1,649,539            平成26年 1,858,638

数字だけ見ると、こうなっています。売上、当期純利益ともに増加しています。それに伴って内部留保(当期純利益−配当金=利益剰余金の増加)も増えていますね。ただ数字の大小だけを見ても比較になりません。もう少しよく見ていきましょう。

本当に企業は現金を貯めてこんでいるの?

前回も書きましたが、内部留保(利益剰余金)が増えているからと言って、企業はさらに投資を増やす余裕ができる訳ではありません。そこでいくつか計算をしてみます。

当期純利益/売上
利益が増えて内部留保も増えているようですが、どのくらいの利益率なのか最初に見たほうが良さそうですね。平成22年は1.35%、平成26年が2.85%。利益率は高くなっています。

内部留保/当期純利益
平成22年は44.57%、平成26年が59.13%です。利益に対して内部留保は多くなっています。

(配当金+設備投資+人件費)/現預金
内部留保が増加しても、それが全て現預金として貯めこまれる訳ではありません。持っている現預金に対して、安倍政権が言っている内部留保の吐き出しをどのくらいしているかを計算してみました。平成22年が144.45%、平成26年が135.91%です。平成22年の方が持っている現預金に対して、より多く外に吐き出していそうですね。

(配当金+設備投資+人件費)/売上
売上は会社が資金を得る手段の一つです。年度で区切られた一時点の現預金の数字より、ビジネスの実態に近い結果が得られそうなので計算してみました。平成22年が17.19%、17.45%です。若干ではありますが、平成26年の方が売上に対しては多く投資していそうですね。

いくつか計算してみましたが、2つの年度の比較なんで、はっきりした結果は得られない感じですね。でも安倍政権が言うように明らかに貯めこんでいる訳ではなさそうだなぁ。ぐらいには感じても良さそうです。

あと、もう少し言うならば取り出した勘定科目も不足しています。企業は事業を行っていく上で運転資金が必要になります。この運転資金の目安になる収支ズレは取り出す必要があったでしょう。

企業は誰のものか

安倍政権の主張

平成26年度で企業の利益剰余金(内部留保)は354兆円です。(先に出てきた内部留保は、年度で増加した利益剰余金のことです。約354兆円の利益剰余金は単純に簿記上の数字のことです。)対し設備投資は先ほど見て頂いた通り、約41兆円です。これは10年前と比べると利益剰余金は75%増加しましたが、設備投資は19%減っています。だから投資を増やせ、というのが安倍政権の主張です。

最近では内部留保に対して課税をする、みたいな話も出ています。(産経ニュースの記事

政権の主張は納得されない

このブログでも何度か言っていますが、利益剰余金とは会社設立から積み上げてきた数字です。この数字が多いからと言って、使える現金が多いという訳ではありません。また今回の記事でさっき反省点の一つとして挙げた運転資金。現金が増えていたとしても、運転資金を考慮すると意外と自由に使える現金は、そんなにないことも考えられます。もし投資が少ないと主張するのであれば、もっと納得できる数値を示していく必要があるでしょう。

そもそも企業は株主のもの

また内部留保を吐き出せという主張は、配当や人件費を増やせという意味を含まれていますが、それは企業の経営陣が政府に言われたから簡単に上げられるものではありません。人件費を上げて、利益が減ってしまうと株主からは批判されてしまいます。配当に関しても、利益を配当に回さず事業に再投資することで、株主の投資効率が上がることも考えられます。

企業は株主のものです。政府が要望をそれとなく伝える程度であれば、まだマシですが内部留保に対して課税はもってのほかだと思います。


とまぁ、ちょっと自分なりに考えをまとめて見ました。このブログは考えながら、調べながら書いています。ですので、かなり詰めの甘い意見になっています。それに多少グダグダかも。面倒くさがりなので、書き直すのとかイヤなんです。読んでくださった方は、最後までお付合いありがとうございます。

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